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お知らせ

2019/10/21

重点枠SSHタイ受入プログラムレポート 10月6日〜10月13日

慶祥・重点枠SSHの1年目より連携し、ともに国際共同課題研究プログラムを作り上げてきたタイのプリンセス・チュラポーン・サイエンス・ハイスクール・パトゥムターニー校(PCSHSP)との交流が今年も始まりました。


今年度のプログラムには慶祥のみならず、札幌開成・札幌南・札幌藻岩・ICU高校からの賛同があり、5校・15人の日本人生徒が参集しました。

一方、タイ側でも、複数合同というスタイルに触発され、PCSHSPに加えてテープシリン・パトゥムターニー高校が合同で参加しています。

参加生徒達は夏頃からLINEで連絡を取り合い、それぞれが興味を持つ研究テーマを提案し合いながら、5つの研究グループを決め、中身のディスカッションを進めてきました。


1~2日目は東京での研修となり、東京大学大学院総合文化研究科での研修、ICU高校のメンバーとともに本郷キャンパスの見学などを実施した他、これからの科学技術の“ミライ”を考える日本科学未来館で大いに刺激を受けてきました。


3~5日目は札幌に活動場所を移し、様々な学びが目白押しです。

本プログラムのメインである共同課題研究がいよいよ本格的に進み、各グループとも中間発表までを目指してのデータの収集や、今後の展望のディスカッションに没頭しました。(なお、最終発表は翌年2月のタイ訪問プログラムにて行います)


今回揃った研究テーマは、

・Comparison of Properties between Thai and Japan Nepenthes~タイと日本のウツボカヅラの性質の比較~

・The Study of Burned Scallop Shell Properties to Cure the Mosquito Bite in Human~貝殻成分による蚊刺されのかゆみ緩和への効果~

・CEFR Word Ganes~CEFR学習ゲームのプログラミング~

・Medical Hydrogel~ハイドロゲルの塗り薬への応用~

・Study of Sound Quality from Bamboo Instrument~竹で作った楽器の音質の比較~

の5つです。
研究活動の他にも、長沼中央農業試験場で農薬や品種改良についての講義を受けました。

特に植物関係の研究を進める生徒達に刺激になったことでしょう。

また、タイのPump先生・Chutharat先生を中心とした特別授業、札幌開成の加賀先生による「Theory Of Knowledge(知の理論)」の授業、慶祥のMatthew先生による「Seismic Excitement(地震・揺れと構造設計)」の講義など、参加校それぞれの教諭陣から充実したレクチャーが用意されました。

Matthew先生は慶祥の英語の先生ですが、実はカナダで橋やダムの設計をしていたという筋金入りのエンジニア! 地震の被害を抑えるためのビルの設計などについて、パスタとマシュマロのモデルを使いながら学びました。


6~7日目は、北海道大学における研修、そして共同研究の中間発表と続きます。

北海道大学では、晴れ空の下、広大なキャンパスを散策し、総合博物館で貴重な資料や最先端の研究展示に目を輝かせました。

そして、充実の体制で迎えてくださった低温科学研究所では、氷河と海氷についての講義と、低温科学の意義について説明を聞き、この研究がいかにダイナミックで地球規模の学問であるかを知りました。

さすが理数の基礎がしっかりしている生徒たちだけあって、講師の先生の問いかけにもしっかり考えて答えていました。

南極やグリーンランドでの氷河観測の装備の紹介、-15度、そして-50度の冷凍室で保存されている南極の氷を目の前で見るなど、初めてだらけの体験だったことでしょう。

普段の課題研究で、その研究がどのように役立つか・また応用できるかということを重視しているタイ生徒たちの目には、地球上の真水の分布や球温暖化の問題などに直結する本研究所の取り組みは興味深く新鮮に映ったに違いありません。


このような色々な場所での研修で、タイの生徒たちのお世話には、2月にタイ訪問プログラムに参加するメンバーが中心となって当たっています。

ここでも、慶祥・開成・札幌南・札幌藻岩・ICU高校と、学校の垣根を越えて連携して交流プログラムを支えてくれています。

頼もしい限りです。日本文化体験・交流プログラムでも、一人ひとりオリジナルの箸を作ったり、全員でラジオ体操をするなど、日本の高校生としての創意工夫が散りばめられていました。

伝統衣装をまとったタイの生徒達による、灯篭祭りの紹介や花船作りも大変素敵でした。


最終日も、息つく間もなく各研究グループの発表に向けて、さらなるデータ収集とプレゼンテーションの準備です。

タイと日本のどちらのメンバーにとっても、共同で一つのプレゼンを作るには、英語でのコミュニケーションや英語での科学的な説明が必須な訳ですが、このプログラムを通して少しずつそれが自然になってきたのではないでしょうか。

世界中のどこでも、こうやって国や文化の垣根を越えて同じ目的に向かって進むことができたらと夢想してしまう瞬間です。

ぜひこのプログラムの経験者の皆さんにはその担い手になってほしいと願います。
各グループの発表では先生方からの掘り下げた質問が飛び交い、生徒からの疑問提起やディスカッションも続きました。

このプログラムで身につけたいスキルの第一はここです。

「英語で、サイエンスについて、研究についてディスカッションする」力を磨くことで、皆さんの活躍の舞台はグローバルなものとなります。


発表会に続き終了式が執り行われ、慶祥の中村教頭より一人ひとりに証書が贈られました。

今回の出会いによって、慶祥のサイエンス教育はさらに大きな可能性を広げ、また生徒たちの豊かな人生へと大きく寄与することができます。

これからもこの関係を大切にしていきたいと思います。 お別れパーティーには、ホームステイでお世話をしてくれたホスト生徒とその家族も集まり、盛大な親睦会となりました。

新千歳空港での見送りでは、今生の別れの空気ではなく、2月の再開の約束し、研究活動推進への決意を新たにする生徒たちの熱気が流れました。

受入プログラムとしては終了しましたが、プロジェクトとしてはまだ半分です。今回出来上がったいいチームで後半戦もよく学び、よく楽しんでほしいと思います。


なお、このプログラムは、独立行政法人科学技術振興機構JST主催の「さくらサイエンスプラン」に採択され、実施したものです。

この場をお借りして、JSTによる多大なご支援に感謝申し上げます。